第3章 入院生活(3)(入院3日目・手術の1日後)

第3章 入院生活

無事に、子宮全摘手術が終了しました。

直前に予定が二転三転し、ばたばたと慌ただしく手術が決まったことで、夫に『これから手術だよ』『手術が終わって、身動きは取れないけれど、何とか無事だよ』という連絡ができていないことが、大きな気がかりでした。

明けない夜はない

さまざまなブログでも、この「手術当日の夜が、一番辛かった」という記述を見かけます。

確かに、熱っぽい感じがして、お腹が張って苦しくもありました。
寝返りを打とうにも、体じゅうにさまざまなものが取り付けられていますし、力の入れ方や加減もよく分からない感じです。
が、まだ傷口の痛みはまったく無かったのが、幸いでした。

熱があったせいか、なぜか頭の中で、米津玄師とあいみょんの歌が、交互にエンドレスで流れていました。
熱にうなされる時って、頭の中がエンドレスに何かで埋め尽くされますよね(私だけ?)。

「長い長い夜ではあるが、明けない夜はない」と自分に言い聞かせながら、朝が来るのをひたすら待ちました。

依然として喉がザラザラした感じが続き、寝たと思ったらまたすぐに目が覚め、という状態ではありましたが、よく眠れた方だと思います。

ようやくやって来た朝。朝食は完食

6:30
すっきりしないまま迎えた朝。
さっそく、看護師さんによる体調チェックです。

いつもの検温・血圧・血中酸素濃度の測定に加え、傷口のチェックもありました。
傷口の目視と、聴診器で腸の動きを診て頂きます。

傷口には、メンディングテープのような半透明のテープが貼られており、若干血のにじみは見えましたが、やはりまだ痛みはありません。
「痛みが来たら、背中に入っている硬膜外麻酔のボタンを押すように」と言われてはいましたが、幸い、まだその機会は訪れてはいません。

あとは採血をし、今後のスケジュールについて共有。
お昼頃には、尿の管と左腕の点滴が取れるそうで、そこでようやく少しは、身動きの自由が取れそうです。

その後、別の看護師さんにより、全身を蒸しタオルで清拭して頂き、少しさっぱりとしました。
また、この時はまだ術着を着ていたのですが、ついでに自前のパジャマとショーツへ替えて頂けました。
この時のために、替えのパジャマとショーツは、分かりやすい場所へ置いておくと、良いかと思います。

「体じゅうにさまざまな線がつながっているのに、どうやって替えるんだ?」と思いましたが、そこはさすがのプロフェッショナルの技。
たったお一人の手で、私が横になったままの状態にもかかわらず、手品のようにすんなり着替えが終わり、大いに感激しました。

8:10
待望の、朝ご飯です。
正直、お腹が減っているのかどうかも、ぼんやりとした感じではありましたが、やはり「減らないお腹はない」とも言えるでしょう(今、勝手に作った言葉です)。
ベッドのリクライニングのリモコンを手元へ寄せてもらい、ベッドの上半分を起こした状態で、どうにかこうにか腕の力で起き上がります。
「術後最初のご飯は、お粥かな?」と思っていましたが、何と、普通のご飯を用意して頂いていました。
ありがたいことに、問題なく食べ進めることができたため、しっかり完食です。

ちなみに、水分補給については、自動販売機で購入していたペットボトルの水を、普通に飲むことができました。
(当初は、ペットボトルだと、後ろに体を反らせて飲む動作が難しいかな?と思っていましたが、コップへ移し替える必要も無く、普通にペットボトルから飲むことができました。つまり、残念ながら、ストロー付きのコップも、不要だったということに・・)

腸が動く感じはするものの、便意はなく、尿も管から排出されているというのが、何とも妙な感覚です。
昨夜から感じていたお腹の張りは、「お通じがありさえすれば、解消するかな?」と思っていましたが、結果としてこの日は、お通じは無し。

このお腹の張りにより、手術当日よりも、手術翌日である、この日の夜中に一番苦しむことになろうとは、この時には思いもよりませんでした。

尿の管が取れたことで、ようやく夫へ連絡

午前中は、横になったまま過ごしました。
主治医と、麻酔科の先生も、様子を見に来て下さいました。
相変わらず、熱っぽいのと、お腹が張っているのが気にかかるところです。

11:30
看護師さんがやって来て、「歩いてみましょうか?」ということで、さっそく立ち上がって歩く練習です。

朝食の時もそうでしたが、まずベッドのリクライニングを起こした時点で、麻酔の影響なのか、ふわっと立ちくらみのような気持ち悪さが、垣間見えます。

  • リクライニングを起こす
  • ベッドから上半身を離す
  • 体の向きを変える
  • 立ち上がる

など、一つ一つの動作ごとに呼吸を整えないと、なぜか息を吸いっぱなしになってしまい、息を吐くタイミングが分からなくなりました。

また、お腹には力が入らないため、どの動作の時も、腕の力で「どっこいしょ」と体を支えていました。
いつの間にか、ひじがすりむけていたほどです。

どうにかこうにか立ち上がれたので、次はトイレへの往復です。

背中から伸びている硬膜外麻酔を点滴スタンドへ引っかけ、ゆっくりゆっくりと、点滴を引きずりながらトイレへ向かいます。
体を完全に伸ばすのは怖かったので、上半身は前かがみです。

また、普段普通に歩く時はまったく意識していませんでしたが、一歩一歩、足が地面に着く瞬間に、お腹に結構な振動が来ます。
いくらすり足にしてみても、体重が左右の足に移るたびに、お腹に衝撃が伝わる感じです。

試しにお腹を手のひら全体で支えてみると、多少はましになりました。
それでもしばらくの間は、両手の手のひらでお腹を支えつつ、前かがみでそろそろと歩く日々が続きました。

看護師さんに付き添って頂きつつ、何とかトイレへの往復ができたため、無事に尿の管を外して頂き、これ以降は自分でトイレで用を足すことができるようになりました。

尿の管が取れたことで、ようやく自分で動けるように。

次は、セーフティーボックスの鍵を受け取るべく、何とか力を振り絞ってもう一度起き上がり、ナースステーションへ。
これでようやく、セーフティーボックスの中に入れていた、眼鏡とスマホを取り出すことができました。

まずは、心配していたであろう夫へ連絡。
両親や、職場の方への連絡を終えると、それだけで疲労困憊でした。

昼食は食欲がわかず

12:00
お昼頃には、熱っぽさとお腹の張りに加えて、気持ち悪さも増してきました。
残念ながら、お昼ご飯は、半分くらいしか食べられませんでした。
白身魚のムニエル的な?のが、おいしそうだったのですが・・。

12:20
尿の管が外れてから、初めての排尿。
お腹に力を入れれば良いのか?
いやいや、尿は力を抜かなければ、出ないのか?
何やら、感覚がおかしなことになっていましたが、試行錯誤のうえ、無事に排尿できました。

排尿の際、改めてお腹の傷を、まじまじと見てみました。
おへその少し下から、縦に10cmほどの傷です。
傷口を診て頂いた際は、「きれいな傷口だ」とのことでしたが、少し血がにじんではいます。
テープの上から、そのにじみの形に沿って、黒いマジックで線が引かれていました。
おそらく、その線で囲われた領域と、実際の血のにじみ具合を見比べて、新たな出血が無いかをチェックしているのだと思われます。

また、お腹のへこみ具合についても見てみましたが、残念ながら、お腹が張っていることもあり、あまり術前術後での変化は見られません。
筋腫を含めて子宮を全摘したとはいえ、ぽっこりお腹は、どうやら自前のものだったようです(笑)

これ以降は、1~2時間に1回は体を起こし、トイレへ向かうようにしました(ずっと横になっていると分からないですが、「体を起こしてみると、尿意を感じる」ということが結構あったので)。

13:30
左腕の点滴を、外して頂きました。
点滴と尿の管に加え、この時点で、右腕の血圧測定器のバンドと、口元の酸素吸入のマスク、胸の心電図の電極も外されていたため、残るは背中の硬膜外麻酔のカテーテルだけです。
かなり身軽になりました。

さまざまなブログで言われていた、「一番辛い、手術当日の夜」を乗り切ったこともあり、この時は、「これからは、どんどん回復して行けるのかな?」と思っていました。
(そんなわけは、無かったのですが・・)

13:35
夫と電話で会話。
お腹に力が入らないため、口先だけでボソボソと話す感じです。

15:00
検温・血圧・血中酸素濃度の測定。
熱が、37.6℃あります。
ここで、朝の採血の結果が渡されました。特に問題は無いそうです。

また、「次回の診察の予約をしますね」ということで、手術日から見て約2週間後に予約を取って頂きました。
「2週間後にどうなっているか」の想像がまったく付かず、おかしな感じです。

夕方から、お腹全体が痛み始める

体じゅうにつながれていたものたちが少しずつ減り、喜んだのもつかの間。

夕方から、お腹全体が痛み始めました。
妙な話ではありますが、子宮はもう無いのに、生理痛のような、キリキリとねじられるような痛みです。
これまでまったく痛みが無かったのは、単なる幸運だったのでしょう。

16:30
たまらず、背中から伸びている、硬膜外麻酔のボタンを初めて押しました。
何となく、背中にひんやりと冷たいものが流れる感覚。
ですが、しばらく経っても、効いてくる感じがしません。
(のちほど聞いた話では、どうやらカテーテルが外れていたのか?麻酔が漏れていたようです。パジャマの背中に染みができていたようで、看護師さんが気付いて下さいました)

18:00
夜ご飯が運ばれて来ましたが、あまり食べる気にはなれません。
結局、3分の1ほどしか食べられませんでした。
熱っぽいのもあったため、処方されていたカロナールを2錠、飲みました。

ガスは、まったく出ていないというわけではありませんでしたが、お腹の張りも増すばかりです。
便意も、あるような感じはしますが、トイレへ行っても、出る気配がありません。
どこまでお腹に力を入れてよいのかが、手探りな感じです。

もうシャワーを浴びても構わないようでしたが、とてもそんな気にはなれません。

20:00
夫から「今、猫がご飯を食べている」とLINEがあったため、見守りカメラ的なものの映像を見てみました(スマホのアプリで、映像を見られるようにしています)。
カリカリと、ご飯を食べている猫の後頭部が見えました。
見守りカメラの位置が、いまいちな気はしますが、猫が元気そうでほっとしました。

22:00
就寝前の検温・血圧・血中酸素濃度の測定。
その際、お腹の痛みを訴えました。

背中を診て頂くと、やはり「硬膜外麻酔のカテーテルが抜けているようだ」とのことで、看護師さんから当直の先生を呼んで頂き、カテーテルを抜いて頂きました。
期せずして、すべての管が体から外れることとなりました。

これに限らず、看護師さんは「すぐに何かしらの処置ができる」というわけではなく、担当の先生へ伺いを立てたうえでないと、対応には当たれないようです。
当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、痛みに苦しむさなかは、「早く楽になりたい」という思いが勝りました。

この時、お腹の張りも訴えましたが、この時点ですぐに、下剤などを処方してもらえたわけではありませんでした。
「聴診器で聴く限りでは、腸は動いているようだ」とのことで、しばらくは様子を見ることに。

とりあえず、翌日の朝からはご飯ではなく、お粥にしてもらいました。

痛みは増すばかり。たまらず、ナースコール

23:30
カロナールを飲んだことで、痛みが和らぐかと思いきや、痛みはどんどん増していきます。

体感的には、

  • キリキリではなく、ギリギリとした痛み
  • お腹全体が絶えず雑巾を絞るような、ねじり切られるような痛み
  • 生理痛の一番痛い時の、10倍くらいの痛み

という感じです。
かつての生理痛のような、周期的に波がくる痛みではなく、常に痛みが増しているイメージです。

お腹の張りも含めて、どうにも痛みに耐えられなくなり、深夜に申し訳なくはありましたが、ナースコールで助けを求めました。

再び、看護師さんから当直の先生にお伺いを立てて頂いた結果、腸を動かすための点滴をして頂くことに。
せっかく、点滴も背中の硬膜外麻酔も無くなったことで、トイレの際も身軽になったばかりだったのですが、再び左腕に点滴が入ります。

下剤については、すぐにでも処方して頂きたかったのですが、「一晩様子を見た上で、また先生に相談しておきます」ということで、いったん保留に。
ひと思いにお腹をすっきりさせたかったのですが、そういう訳にもいきませんでした。

思わず、「いででで・・」と声が漏れ、顔がゆがむほどの痛みが続きました。
看護師さんも、どうしたものかと考えあぐねているようではありましたが、これ以上はどうしようもありません。

「ひょっとして、腸が癒着しているのではないか」「このままお通じが無かったら、浣腸や摘便をせざるを得なくなるのか」など、悪い方への想像も止まりません。

一晩中まんじりともせず、ひたすらお腹の痛みと張りに苦しみました。


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